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市原 晃
no journal, ,
テラヘルツパルス列を用いて同位体選択的に回転励起させた二原子分子を、更に振動励起させるための光パルスの波形を、計算機シミュレーションを通して探った。本研究では70KにおけるLiCl及びLiClの気体分子集団に対し、緊密結合法に基づく数値計算を実施した。スペクトルが擬矩形あるいはガウス型波形を持つパルスを使用し、同位体選択的振動励起に有効なパルスの特性を調べた。そして分子のP-及びR-枝遷移周波数を参照してパルスの周波数領域を設定することにより、分子を選択的に振動励起できる結果を得た。本研究により、P-枝遷移が低振動状態の分子励起上重要な役割を果たすとともに、P及びR-枝遷移の両者が高振動状態の励起に寄与できることを明らかにした。
下条 晃司郎; 矢部 誠人*; 杉田 剛; 岡村 浩之; 大橋 朗*; 長縄 弘親
no journal, ,
溶媒抽出法は金属の分離精製において有効な技術であり、その分離効率は抽出剤が大きな鍵を握っている。本研究では酸解離型ジアミド配位子を新規に合成し、56種の金属イオンに対する抽出特性を網羅的に調査した。その結果、従来の抽出剤に比べて、Sc(III), In(III), Ga(III), Ni(II)をはじめとする様々なレアメタルに対して高い抽出分離能を有することを明らかにした。
下山 巖; 本田 充紀; 小暮 敏博*; 馬場 祐治; 平尾 法恵; 岡本 芳浩; 矢板 毅; 鈴木 伸一
no journal, ,
福島における放射性汚染土壌のCs除染に対し、我々は低圧昇華法を提案している。本研究では粘土鉱物からのCs脱離機構を調べるため、非放射性Csを収着させた風化黒雲母(WB)にNaCl-CaCl混合塩を添加し、低圧昇華法による処理前後での組成と構造変化を調べた。蛍光X線分析により塩無添加の場合でも700Cで33%のCsが除去され、塩添加時は100%のCs除去率が得られた。また、WB中のKもCsと共に減少し、塩添加時は99%のKが除去された。一方、Caは加熱温度と共に増加し、700CではSiよりも多い組成比を示した。X線回折法による分析ではWB由来の反射が700Cで完全に消滅し、新たな反射が多数観測された。したがって、これらの結果はWBがCaを含有する何らかの珪酸塩鉱物に変化したことを示唆している。そこで処理後の生成物を透過電子顕微鏡により解析し、主要な鉱物として普通輝石が形成されたことを明らかにした。我々はこれらの結果に基づき、粘土鉱物が別の鉱物に変化する際にイオン半径の大きい1価の陽イオンが排出されるメカニズムを利用して、粘土鉱物からCsを除去するCsフリー鉱化法のアイデアを提案する。
稲垣 嘉之
no journal, ,
熱化学水素製造法は、複数の化学反応を組み合わせることによって、直接熱分解に要求される温度(数千度)より低い温度レベルの熱エネルギーを用いて、水を分解する技術であり、電気分解よりも高効率の水素製造が可能である。原子力機構はヨウ素と硫黄を利用したIodine-Sulfur(IS)プロセスの研究開発を進めており、約950Cの高温熱を取り出せる高温ガス炉(HTGR)の試験研究炉(高温工学試験研究炉)と接続し、原子力による水素製造を実証する計画である。また、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアにおいて、ISプロセスの熱源として太陽熱を利用するため、ISプロセスの各反応に膜分離を適用する技術開発が産学連携で進められている。本講演では、これらの開発状況について紹介する。
杉田 剛; 下条 晃司郎; 岡村 浩之; 長縄 弘親
no journal, ,
溶媒抽出法は水中に含まれる金属イオンの分離に有効な技術であり、その効率は使用する抽出剤に依存する。本研究では、アミド基とリン酸基をエーテル鎖で連結した新規リン酸系抽出剤(DOAOBPA)を合成し、56種類の金属イオンを対象とした網羅的抽出を通して抽出特性を評価した。その結果、ほとんどの金属イオンに対して市販のリン酸系抽出剤よりも優れた抽出能を示し、二価金属イオンやアルカリ金属イオンの抽出において興味深い抽出特性を持つことを明らかにした。
大内 和希; 音部 治幹; 北辻 章浩
no journal, ,
先行研究では、弱酸性溶液中のU(V)からU(IV)の還元反応において、U(IV)の酸化物微粒子の形成に伴いU(V)の電極還元および不均化反応速度が増加する自己触媒作用を示すことを見出した。本研究では、電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)を用いて電極表面に析出した凝集体の質量を測定することで、Uの原子価変化とそれに伴うU酸化物微粒子の形成反応との相関を調査した。pH3.4の弱酸性溶液中のU(VI)の還元に伴う析出の速度変化から、凝集体の形成過程は、凝集開始までの誘導過程、凝集体開始後一時的に速い成長速度を示す準安定凝集過程、一定の成長速度になる安定凝集過程の3段階で進行していることが分かった。次に、pH24での凝集体形成過程を調査したところ、pHが高くなるとともに誘導時間が短くなり、準安定および安定凝集体の成長速度が大きくなった。これは、U水酸化物が凝集体形成反応に関与していることを示唆している。
越川 博; 山本 春也; 杉本 雅樹; 喜多村 茜; 澤田 真一; 八巻 徹也
no journal, ,
数百MeVに加速した重イオンを高分子膜に照射し、アルカリ溶液で化学エッチングすると、直径が数十nm以上でさまざまな形状の穿孔を作製できる。本研究では、円すい状に制御した穿孔をテンプレートとして用い、蒸着法と電気メッキ法を組み合わせた新しい手法による金属ナノニードル作製を検討した。330MeVに加速したArイオン(フルエンス: 3.010 ions/cm)を25m厚のポリイミド(PI)膜に照射した後、60Cの次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)溶液で30分エッチングすることにより表面直径500nmの円すい状穿孔を得た。その後、穿孔の内壁に金薄膜をスパッタ蒸着し、これを電極としてpH1に調整した1M硫酸銅水溶液を電解液として銅メッキを施した。NaClO溶液でPIテンプレートを溶解、除去し、走査型電子顕微鏡(SEM)により表面を観察したところ、銅基板上に直径500nm、高さ1.2mの銅ナノニードルを作製することができた。
Nuryanthi, N.*; 八巻 徹也; 喜多村 茜; 越川 博; 澤田 真一; 吉村 公男; 寺井 隆幸*
no journal, ,
高エネルギーイオンの潜在飛跡内に形成される励起活性種(ラジカルや過酸化物)によるグラフト重合を利用して、アルカリ燃料電池用アニオン交換膜の開発を進めている。今回、このいわゆるナノ構造制御アニオン交換膜が有するOH伝導性について調べたので報告する。アニオン交換膜の作製は、(1)エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体膜(25m厚)のイオンビーム照射、(2)照射膜への塩化ビニルベンジルモノマーのグラフト重合、(3)グラフト高分子鎖の四級化の順で行った。膜厚方向のOH伝導率をイオン交換容量に対してプロットすると、線グラフト重合で作製された従来のアニオン交換膜と比べて高伝導化の傾向が確認され、イオンビーム潜在飛跡への高密度導入による効果が示唆された。
太田 智紀*; 八巻 徹也; 杉本 雅樹; 山本 春也; 越川 博; 萩原 時男*
no journal, ,
燃料電池カソードに用いられる白金触媒の代替材料として、炭素系触媒が期待されている。炭素系触媒の酸素還元反応(ORR)活性は、グラフェン状炭素の一部が窒素原子に置換した構造に起因すると考えられている。そこで本研究では、窒素導入量の制御を目指し、アンモニア(NH)下での電子線照射によって炭素系触媒への窒素の導入を試みるとともに、そのORR活性を評価した。実験ではフェノール樹脂に塩化コバルト(II)を最大10wt%で添加した試料を炭素源とした。1vol% NH/N雰囲気下で400Cまで加熱しながら2MeVの電子線を6MGyまで照射し、その後でN中、800C焼成して炭化した。粉砕した試料から塩酸で残留コバルトを除去した後、回転電極法でORR活性を評価した結果、酸素還元電位は0.72V(vs. Ag/AgCl)であった。この値は白金の0.78Vに匹敵する高い値であることから、NH下での電子線照射により、ORR活性を有する含窒素炭素系触媒を作製できた。